5月13日 8時半に台北駅北側のホテル前に集合し、早速茶産地ツアーの開始です。
今にも雨が降りだしそうな天気の中、広橋さん、私たち4名、ガイド兼ドライバーの朱さん、台北在住のIさんの総勢7名、車2台で桃園方面へ。
長生製茶廠
車内でおしゃべりしていたら、気分的にはあっという間に目的地へ到着しました。実際の所要時間は45分くらいでしょうか。
現地に到着すると、茶農家の林和春さん(and わんこ)が迎えてくださいました。
まずは雨が降り出す前に、畑を見学させていただきました。赤土の土壌の畑に植えられているのは青心大冇です。
一番茶の時期は過ぎ、今は2番茶や東方美人を生産する時期。有機の畑なので、虫がいて足を何箇所も虫に刺されましたが、まだ気温が低くウンカは少ないそうです。
案内してくださった畑は実験的に半分は日本式にひと畝に2本ずつ、半分は従来の台湾式にひと畝1本で植栽されているとのことでした。
続いて工場の中を案内いただきました。
工場の2階では紅茶の茶葉を日光萎凋している最中でした。
昔は工場の建物の外で萎凋をしていた、と話してくださいましたが今はとても衛生的な全天候型です。
食品衛生法上、お茶の加工は一方方向に流れていかなくてはならず、萎凋室の茶葉の入口と出口は別にする必要があるそうです。
萎凋室の1箇所からクレーンで茶葉を入れ、萎凋した茶葉の出口はここ
1階へ落とします。
その後、揺青機にかけられて発酵がすすみます。
東方美人の生産は、現在もこちらの「かれい」で手作業で揺青するそうです。
揺青はいかに水分を飛ばすかが重要で、昼間は茶葉の中の水分が少ないため加工しやすく、また雨の日はいつもの倍近い時間がかかるので作業しないそうです。
揺青時、水分を飛ばす過程で茶葉の中の成分Aと成分Bが結合する、と説明がありました。AとBとは、たとえば「カテキン」と「酸化酵素」ですか?と質問したらそれはその一部。実際には2000〜4000の要素がある、と答えてくださいました。すべての成分は解明できていないのではないでしょうか。
その後釜炒り機で殺青。釜炒り機の前方の床は、お茶の熱で変色していました。
殺青は10分ほどで完了しますが、殺青機の速度、温度、茶葉の量によって細かく機械の調整が必要だそうです。複数の機械はそれぞれ内径や厚みも異なり、少なくとも3年の経験が求められるようです。
次に揉捻をして茶葉の表面を傷つけます。
お茶を淹れた時に、茶水が濁るのは揉捻で揉み過ぎているそうです。
茶水の透明度が高いものは適切な揉捻なんですね。
その後1時間乾燥機にかけて水分を60%減少させます。
台湾茶に多い粒状の茶葉は袋の中に茶葉をいれて、団揉機で強い力をかけます。機械にかける前に人力で袋を捻りこんでいくので、捻挫など怪我の原因になることがあり、あまり使われなくなったそうです。代わりに豆腐機という機械で固めるのですが、豆腐機は力が入りすぎるところが問題のようです。
ちなみに紅茶を作る時は揉捻を4時間行い、かれ上に置いて4時間発酵させているそうです。
最後の乾燥は3回に分けて行い、1回に30%ずつ水分を減らしていきます。
保管されているお茶は2重の袋に入れられていました。内側の樹脂の袋は湿気を防ぎ、外の布袋は光を防ぎます。
一通り、案内をいただきましたら、お茶の試飲タイムです。
飄逸杯で淹れてくださいました。水は井戸水だそうです。(関係ないけどティッシュケースがユニーク!)
1つのお茶の内容量が150g、お茶によっては300g単位と大きいのであれこれ買えないのが残念。
摘み手も従業員も減らし、機械化を進めて現代的なお茶づくりへの転換を進めている林さん。いかに省力化しておいしいお茶を生産するか研究熱心な姿勢を拝見しました。お茶は手の届かない高級品ではなく、日常にあるべきものだというお考えです。衛生的で整然とした工場は、安心安全なお茶づくりに心を砕かれている様子が見て取れました。
私たちのような、生産者でもバイヤーでもないただのお茶好きに対して、丁寧に対応してくださったことに深く感謝します。日本語能力も卓越されていますし、日本の生産者が林さんのところで勉強されるというのも納得できました。
福源茶廠
ランチを挟んで、次に向かったのは100年前の製茶機械があるという茶廠。
ここは、お茶生産の時期は見学を受け入れていないそうで、知らずに入ってしまい申し訳ないことをしましたが、少しだけ中を拝見しました。
現在、こちらでは「茶里王」というペットボトルのお茶の原料を生産されているそうです。ちょうど前日の夕食時に飲んだお茶でした。
大渓老茶廠
次に向かったのは、日本が台湾を統治していた時代の日東紅茶の工場です。
今は観光施設として内部を見学できます。説明の動画を見るとどんな場所かよく理解できます。
巨大な室内萎凋槽が目を引きます。お茶に関する豆知識のような展示もありまして、勉強になります。
入場料は150NTD、うち100NTDは金券として使用できます。茶葉や茶器も販売していますが、私は茶葉を使用したお菓子と交換してもらいました。
鶯歌
陶器の街で茶器を物色したくて、立ち寄りをお願いしました。
すでに16時を回っておりましたのでさくっと廻ります。
買い足したかった風清堂の蓋碗と茶杯を購入しました。参加者のOさんもシンプルな蓋碗と可愛らしい茶杯を買われました。別の店で茶挟や竹製の茶荷を買いました。
時間があれば他の店も見たかったなあ。
天芳茶業
緑茶が飲みたいとリクエストしておいたので、三峡の生産者のお店へ。
新茶の碧螺春とバラ紅茶を試飲しました。現地のゆずで香りづけした緑茶や紅茶もあるようですが、ゆず緑茶はすでに売り切れだそうです。
碧螺春は中国茶の碧螺春とは全く異なる様子、品種は青心柑仔で明前茶です。
こちらは数々の品評会で入賞されている、実力派の茶農家のようです。
お店の老板娘(奥様)がお茶を試飲させてくださったとき、このお茶は野菜の香りがある、と説明されていました。台湾では、「菜香」「花香」「果香」と表現するようです。「菜香」って初めて聞きました。
リクエストにも答えていただき、てんこ盛りで疲れ果て、台北に戻って夕食を食べて解散しました。